連載小説『スカイファング外伝』



という訳で、スカイファング外伝3話です。
なんか、スラスラと病んだ文章が出てくる
自分の思考回路はショート寸前なんじゃないでしょうか?
まあいいや、とりあえず読みたい方だけ
読んでいただければ良いというスタンスで
今後は書いていく方向で。




「そうだね、負け犬の遠吠えなんて聞くだけ無駄だね。マキエ」


テディベアの、陸上戦艦の艦長席に座る
全長一メートルの巨大なぬいぐるみが言葉を発した。


「……」


頭が痛い、シズナはそのテディーベアが、マキエ少佐の妄想であれば
もしくは自分の妄想であればと、何度も考えている。


だが、そのテディーベアはマキエ少佐以外の人間にも
シズナ以外の人間にも話しかけているようなのだ。


一番この部隊でまともな神経をしていそうなリュウ准尉ですら
この愛玩用の熊の人形が存在し、そして喋ることを認識している。


恐ろしい話だ、理解できない話だ。認めたくない話だ。


だがしかし、ユウジロウさんと呼ばれるテディーベアは
艦長席に頑として存在し、その愛嬌のある外見とは裏腹に
シズナに猛烈な違和感と、そしてじわじわと染み込む様な
恐怖を与え続けている。


「シズナさん、後どれくらいでリュウ准尉たちは戻ってくるかしら?」


くるっと、オペレーターの座る回転椅子ごとシズナに
振り返って、マキエ少佐が話しかけてくる。


いきなり話を振られたシズナは一瞬びくり、と身を竦ませるが
すぐに平静を取り戻す。マキエ少佐は基本的に優しい人間だ。


彼女の夫であった、ユウジロウ大佐の死にさえ触れなければ
少なくてもいきなり逆上し、拳銃でその事に言及した相手の頭を
撃ちぬくような真似はしない。
ルールがハッキリしている為、分かりやすい狂人だと言える。


マキエ少佐がユウジロウと呼ぶ喋るテディーベアを視界から外し
出来る限り意識しないように、シズナは返事をする。


「多分、後三十分以内に戻ってくると思うわ」


汗が、出てくる。
そう、ルールははっきりしている。だから少なくても自分は
ルールに違反するようなことは言っていない。だから自分は殺されない。


しかし、それはあくまでも相手がまともな思考回路を持っているという
そんな前提の上で成り立つ話であって、狂人にそんな常人のルールが……


「そうですか、困りましたわね。確かユウジロウさんの予測では
後二十分以内にカオスティアの群れが、近くに現れると……
そういう予測でしたよね?」


くるり、と彼女は再び椅子に座ったまま回って向きを変える。
視線が外れ、シズナは心の中で安堵した。


彼女の、マキエ少佐の瞳は狂っているように見えない。
だが、だからこそリサ准尉のように、分かり易く壊れている
狂人と比べると、ずっと。もっと。より恐ろしいものを感じてしまう。


「そうだなぁ、まあ運がよければ接触せずに帰ってこれるんじゃないのか?」


テディーベアが喋る。随分と適当な言い草だが、このテディーベアが
こんな風に話す時には、ほぼ100%出撃した人間は帰ってくる。
そうでない時には、多分死んでいるね? とか、もう死んだとか
もっと悲惨な話をその軽い音質の声でからからと喋る。
さらにこのテディーベアは、カオスティアの出現を予測する。
忌々しいことにこのテディーベアの予測無しに
シズナたちは今日まで生き延びる事は不可能だったと言わざるを得ない。




目を閉じ、祈る。
自分が知る限り唯一、この陸上戦艦で、まともな人間である
リュウ准尉が無事に帰還することを。そして、彼に引っ付いて離れない……
彼以外の生きた人間を、まるで汚物を見るかのように見つめるリサ准尉が
出来れば死んで帰って来ない事を。
シズナは二年前に信じることを止めた神に祈るのだった。




今回は選択肢無しで。
次回はなんか戦闘する予定。
こう、全体的に話の内容が欝々しているので
戦闘シーンだけでもスカッと出来たらなと思いつつ。